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いつも追いかけたのは、お前の背中。
一歩上を行くお前の後ろを、護れるのは俺だけだと思っていた。
「自惚れ…か」
自嘲。
とんだナルシストかもしれない。
あいつは上に行くヤツだ。どこまでも高みへと上り詰める。
そんなあいつのために、俺には一体なにが出来るんだろう。
精神安定?
共に戦うこと?
忠実な兵隊はいる。手にも足にもなり、働く忠犬。
実働は、彼らに任せればいい。
なら俺は―――ロイのために、なにをする?
「お前に雨が降り続くなら…俺は傘になろう」
イシュヴァールの後、俺はあいつにそう告げた。
もうこんな世を造らないために。
上を目指すヤツへ、俺は言った。
背中も、頭上も、お前を襲う全てのものから護ろう。
雨だけではない。
雨のような銃弾からも、理不尽な権力からも、お前を妨げる全てのものから。
そして平和な世界が来たら、お前に告げよう。
誰よりも…ロイ。
お前を、愛していると。
背中
「背中が、好きだな」
「…は?」
「私はお前の背中が好きだ」
ロイからの予期せぬ言葉に、自然顔がニヤける。隠そうと煙草に手をかけると、その手を止められた。
好戦的な瞳。
挑発的な態度。
「ときめいたか?」
口角を上げる表情に、俺は不覚にもトキメイていた。。
踊らされている。
彼の言葉、態度。
その全てが俺を刺激して、微笑みに隠そうとしてしまうのだ。
本当の気持ちを。
「どうしてだ?」
「大きいからな…私を、護るのだろう?」
背にふれる手。
熱い。
彼の能力そのもののように、ふれる場所からじりじり燻る焔。
俺の導火線に火を点けたことなんて、お前は知るまい。
「護ってやるよ」
その肩を強く抱いた。
この肩にどれだけの責任と哀しみを背負っているのか。
優しいお前は、今まで手にかけた人間の人生まで背負い込んでる。
俺に、半分寄越せ。
きっとそう言っても、お前は頑として首を縦には振らない。
自分の責任は自分で取る。
きっちりとしているお前に頼れなんて…そう思う俺を、愚かと笑うか?
お前を支えたい。
せめてお前の背中―――護る楽しみは、奪わないでくれ。
「…苦いな」
咥えていた煙草を取り、ロイが一息吸った。
形のいい唇、ふれたい欲望を抑える。
「―――っ」
「お前の、味だな」
肩に手をかけられ、わずかにふれられた唇。
そのまま抱き締めようとすると、彼は勝ち誇ったような瞳でするりとかわした。
「じゃあ、またな」
裾を翻し、手を振ってロイはその場を後にした。
弛む口元、ヤツの咥えていた煙草を吸うと、少しだけロイの残り香がする。
「背中、ねぇ…」
俺も、いつか言えるだろうか。
お前の背中を護ることに、至福を感じていると。
そして―――背中だけでなく、俺の全てを、好きになってほしいと。